男性の30%が薄毛に悩んでいる
髪の変化は、多くの人が加齢とともに抱える悩みのひとつです。特に薄毛は外見に大きな影響を与えるため、「何とかしたい」と思われることが多いようです。薄毛は早ければ思春期以降に始まり、成人男性の約30%に見られ、女性にも発生する可能性があります。薄毛の基礎知識と対処法を知って、いつまでも若々しい髪を保ちましょう。
男性型脱毛症が起こる仕組み
円形脱毛症や甲状腺機能低下症などの疾患に伴う脱毛を除けば、男性の薄毛の多くはAGA(男性型脱毛症)が原因です。その原因は、テストステロンです。
髪の根元にある毛乳頭にあるホルモン受容体は、毛乳頭に届けられたホルモンをもとに、発毛や脱毛を指示しています。
アンドロゲン「テストステロン」が頭皮にある「5αリダクターゼ」と結合すると、アンドロゲン「DHT」に変換される。このホルモンが毛乳頭の受容体と結合すると、脱毛が指示されます。
DHTは誰でも持っていますが、量が多い人や作用が強い人は抜け毛が多くなり、薄毛になりやすいと言われています。
AGAは髪の「軟化」を引き起こします
AGAでまず起こるのは、髪の軟毛化です。ヘアサイクルは、髪が成長する「成長期」、髪の成長が止まる「退行期」、髪が自然に抜ける「休止期」からなり、通常2~6年で終了します。
通常、このサイクルで髪は太く長く成長しますが、DHTの影響が強いと脱毛指令が強くなり、髪が抜け落ちて細く短くなります。つまり、太くて長い髪の量が減り、柔らかい産毛だけが残るため、柔らかい髪になるのです。
気になる部分の毛髪の20%以上が軟毛化すると、AGAと診断されます。
男性の場合、剃り込み部分の薄毛や頭頂部の丸い薄毛が多く、「M字型」「O字型」と呼ばれることもありますが、薄毛の形によって原因が異なるわけではありません。
女性型脱毛症のメカニズムや特徴について
女性の薄毛は男性よりも複雑で、原因や治療法が特定されていない部分も多いのですが、多くの場合、女性版AGA「FAGA」(女性男性型脱毛症)であると言えます。というのも、女性もアンドロゲンを生成しているからです。
女性の場合、アンドロゲンは副腎皮質で作られ、その量は男性の10分の1から20分の1に過ぎませんが、その強い作用によって薄毛になることがあります。毛髪は、早い人では20代から見られますが、特に閉経後に増加します。これは、閉経後に女性ホルモンが減少し、男性ホルモンが相対的に増加するためです。
女性の場合、「M字」や「O字」のような髪質ではなく、髪全体が薄くなり、髪の内側が透けて見える傾向があるため、「びまん性脱毛症」と呼ばれることもあります。
遺伝が大きな要因ですが、対処法もあります
AGAやFAGAの原因の多くは遺伝です。男性は父親の髪と比較しがちですが、実は母親側の影響の方が大きいのです。というのも、薄毛の8割はX染色体上の遺伝子が関与していることが原因です。男性はXY、女性はXXという性染色体を持っており、男性は必ず母親からX染色体をもらっています。そのため、母方の祖父や親戚に薄毛の人がいる場合、自分もAGAを発症するリスクが高いと言えます。
一方、女性はX染色体が2本あり、片方が薄毛の遺伝子であっても、もう片方がそうでなければ薄毛を発症することはないのです。
遺伝というと悲観的に聞こえるかもしれませんが、薬でよくなるケースも結構ありますし、日常生活で工夫することも可能です。そのため、早めに気づいて行動することが大切です。
このような状態に気づいたら要注意です!
薄毛は気づかないうちに進行していることがあります。以下のチェックリストで見極めてください。
- 薄毛、短髪は枕元によく現れる。
- 同窓会などで、髪が少なくなったように感じることがある。
- 突然の雨で傘をささずに屋外を歩くと、頭皮に雨を感じることがある
- エレベーターの天井にある鏡などで何となく自分の頭を見ると、思ったより髪が薄い。
- 洗髪後、髪を乾かすと、どうにも髪がぺちゃんこになる。
これらの条件に当てはまる方は、髪が薄くなっている可能性があります。皮膚科や毛髪専門医の受診をおすすめします。また、医師に相談し、薬で髪を治療することに加え、以下のことにも気をつけましょう。
男性には「DHT阻害剤」が有効です
AGAの治療薬には、AGAの原因であるDHTを阻害する「DHT阻害剤」があります。薄毛 対策 男性についてこちらへ
DHTは成人男性では重要な役割を果たしませんが、胎生期や小児期の外性器の発達に重要な役割を果たします。そのため、妊婦でDHTを抑制すると、男性乳児の外性器が小さくなる可能性があります。このため、女性への投与は禁止されています。
女性が使用できる薬には「ミノキシジル外用薬」などがありますので、専門医にご相談ください。
髪を洗いすぎないようにする
髪のトラブルというと、使っているシャンプーが悪いと思っている人が多いようですが、シャンプー自体が抜け毛の原因になるわけではないので、何を使ってもいいのですが、シャンプーはあくまで髪を洗うものであって、頭皮を洗うものではありません。よく、毛穴に詰まった皮脂が抜け毛の原因になると言われますが、医学論文では、皮脂は抜け毛と関係なく、無関係であることが分かっています。
アトピー性皮膚炎で皮膚の洗いすぎが推奨されないように、頭皮も洗いすぎは禁物です。洗いすぎると、バリアの役割を果たすケラチン成分が取り除かれ、頭皮は乾燥し、もろくなる。また、頭皮に生えている毛を弱らせてしまうこともあります。
とはいえ、やはりニオイが気になる方も多いでしょうから、頭皮はお湯で優しく洗い、あまり強くこすらないようにするか、シャンプーは主に短時間だけにしておくとよいでしょう。
喫煙はできるだけやめる
近年増えつつある電子タバコに関しては、まだその影響がよくわかっていませんが、従来型の火をつけるタイプのタバコは、脱毛に影響があるといわれています。諸説ありますが、喫煙本数が1日に20本以上の男性は、そうでない男性よりもAGAにかかるリスクが高いという報告も。薄毛が気になる方は、できるだけ禁煙に努めるほうがよいでしょう。